そのキス、契約違反です。





「……蓮……?」



——ギイ、と鈍い音。

鍵はかかっていなかった。


中は暗くて、視界が慣れるまで、数秒かかった。


床に、誰かが倒れている。

……一瞬で分かった。



外された仮面、乱れた黒髪。

浅く、かすかに上下する胸。



「……蓮っ」



名前を呼びながら、駆け寄って膝をつく。


触れるのが怖かった。

息はしているから、生きてはいるはずなのに。


もし、冷たかったらどうしようって。



——でも。

肩に手を置いた瞬間、はっきりと伝わる熱。

異常なほどの、体温。



「……生きてる……」



声が、震える。

よかった。

ほんとうに。



無事で…よかった。


胸の奥から、力が抜ける。