そのキス、契約違反です。




「……蓮は……私のことも守ろうとして前に出た。」



掴まれていた腕に手を添え、静かに外す。



「だったら今度は、私の番でしょ」



大丈夫、まだ、冷静さは残っている。


危険も、勝算が薄いことも…全部分かってる。


それでも、蓮がしてくれたことを返したい。


佐伯さんが言葉を失ったまま私を見る。

仮面の奥で、目を見開いているのが分かった。



根拠なんて、ない。

でも、迷いはなかった。



「必ず、連れ戻すから」



背を向けて、走り出す。

人混みを縫い、佐伯さんが指し示した装飾の奥へ。


——あった。

さっきまで気づかなかった扉。



手をかけた瞬間、心臓が大きく鳴る。


……待ってて。


蓮。


今度は、私が助ける番。