そのキス、契約違反です。




「こっちの姿、可愛い」



まって、これどういう状況……!?


てっきり護衛任務解雇されるものだと思っていたのに、なんでこんなことになってるの。

しかも揶揄ってるような声色じゃなくて、真剣に言ってるのがタチ悪い。



「ちょ、ちょっと待って……!ずっと思ってたんですけど、蓮さんって距離感おかしくないですか……!?」

「……は?」

「ち、近いです……」



最後は消え入りそうな声になった。

蓮さんは一瞬ぽかんとしたあと、ふっと目を伏せて、肩の力を抜くように息を吐いた。


「……悪い」


少し距離を取って、静かに座り直す。


「……素で話せる友達なんて今までいなかったし……人との距離感の“普通”がわかんねぇんだよ」


ぽつり、と蓮さんは呟いた。


「蓮さん……」


その言葉に、蓮さんの“孤独”みたいなものを見た気がする。


「でも……そうか、この距離感は“普通”じゃねぇのか」


蓮さんは納得したように、静かに息を吐くと、私の目をじっと見つめた。

そのまま、躊躇することなく私のすぐ目の前へ来て片膝をつく。


「え、ちょっ…」


思わず声が漏れた。


な、なんでまた近づいてくるの……!?

床に座る私と、ほとんど同じ目線。


蓮さんの手はベッドを軽く押さえるように置かれ、逃げ道を完全に塞いでいた。



「でもさ。俺、お前といるのは楽なんだよ。護衛も別のやつはいらねぇ。…お前じゃないと意味ねぇし」



言葉が、胸に直球で刺さった。

どう反応したらいいのか、すぐに言葉が出てこない。



「…だから、この距離感も慣れろよ」



首を少し傾けて、覗き込むように言う蓮さん。


……なんでそうなる…!?

とりあえず、護衛を外される心配はなさそうで、少しだけ安心した。

けれど、胸の奥はまだ落ち着かない。