そのキス、契約違反です。




【side蓮】

 


本当に、いた。



人混みの向こう。

仮面越しでも、見間違えるはずがない。


彩葉だ。


そう思った瞬間、追いかけずにはいられなくて。



心臓が、一拍遅れて強く鳴った。



……いや、違う。

気づいた瞬間から、ずっと鳴ってたのかもしれない。



久しぶりに見たはずなのに妙に現実味がない。

夢じゃないかって疑ってしまうぐらい。



——会いたかった。



本当は、あのまま別れるのは嫌だった。

きっと今日も危険な任務だ。


無事で会える保証なんて、どこにもない。




そんなことを考えながら少し視線を逸らした、その瞬間。



嫌な予感は、最悪の形で現実になった。




——銃声、爆発音。



乾いた音が、天井を震わせる。

反射的に意識がそちらへ引き戻された。



甲板の向こう、ホールフロアの天井近くで乾いた音が弾けた。


一発じゃない。二発、三発。