そのキス、契約違反です。





黒バラの髪飾り。

艶のある花弁、細く伸びた茎。


ついさっきまで、彩葉の髪にあったもの。



無事に帰るための、約束代わり。

“必ず返す”という前提で、手元に残されたもの。


四年前のあの時は──返せなかった。


終わったと思った瞬間全部がひっくり返って、彩葉とは別々の道を歩くことになった。


だから、今回は。

今回は、違う。



「……返すよ、絶対」



そのために、自分がここで折れるわけにはいかない。

頭の奥が、じんわりと熱を帯びる。



……彩葉、強くなったな。


きっともう、守られるだけの子じゃない。



自分で選んで、自分で進んで。



はぁ…だめだな。



……だからこそ。

……もっと、好きになるんだよ。



この想いは返さなくていい。


返すのは、髪飾りだけでいい。



それでいい。

それが、自分の役目だ。