そのキス、契約違反です。



【side律】





ドアが閉まる音が、大きく響いた。


彩葉の気配が完全に遠ざかったのを感じて、壁に背を預けたまま、ずるりと座り込む。



呼吸が思うように整わない。

吸っているはずなのに、肺の奥まで空気が届かない感覚。


体温が、異常に高い。


熱が皮膚の内側からじわじわと滲み出してくるみたいで、自分の身体なのに、どこか他人のものみたいだった。



……ほんと、今の状態で、彩葉がそばにいたら。

触れなくても、声を聞くだけで。



…多分、理性が先に壊れる。



だから、あれでよかった。


近づかないでくれ、なんて。

あんな言い方しかできなかったけど。



無意識に握りしめていた手に微かな痛みを感じて、はっとする。


指の間に挟まれていたそれを、ゆっくりと開いた。