「……創さんに頼まれたんですよ。……蓮さんは護衛を嫌がるし、女ならもっと拒絶するだろうから、って」
私がそういうと、蓮さんは「あー……」と気まずそうに曖昧に呟いた。
「それは………確かに否定できねぇな。最初から“女の護衛です”って聞かされてたら──うん、もっと距離置いてたわ」
「すみません……」
思わず謝ってしまうと、蓮さんは眉ひとつ動かして首をかしげる。
「何で謝るんだよ」
「だって……女の護衛なんて嫌ですよね。バレたからには別の人に護衛の仕事は託すので──」
「別に今、嫌なんて一言も言ってねぇだろ」
「え……?」
蓮さんは視線を落とし、ゆっくり言葉を選ぶように続ける。
「確かに初対面で彩葉が女って知ってたら拒絶してたかもしんねぇけど……今は初対面じゃねーし。彩葉は彩葉だろ」
その言葉に、胸がきゅっと締め付けられる。
「……お前に対しては、素の自分でいられるっつーか……。常にそばにいるなら、素が出せる相手のがいいだろ」
え……
それって、護衛続けていいってこと……?
というか、そんなふうに思ってくれてたんだ。
頭がついていかなくて黙っていると、蓮さんは少しだけ目を細めて言った。
「あと俺、敬語と“さん付け”やめろって言ったよな?」
「そ、それは……学校で幼なじみ設定だし……依頼を受ける上での線引きというか……大事なもので……」
「なんで線引き?」
「……深い関係にならないように、です。任務上、そういうのは邪魔になるので」
「ふーん」
え、なにその返事。
……絶対なんか含んでる“ふーん”じゃん。
私が戸惑う間に、蓮さんはぐいっと顔を近づけてきた。
「じゃあ、邪魔にならなきゃいいわけ?」
「え?」
「俺さ。彩葉が男だろうが女だろうが、もう関係ねぇんだわ。
彩葉くんじゃなくて……彩葉ちゃんに興味沸いた」
ひょい、と前髪を払われ、視線が合う。
今私、女の姿なのに…こんなに近い。
「何言って──」
思わず身体が後ろに引けるけど、背後にはベッドがあって、逃げるスペースなんてどこにもなかった。
蓮さんは当たり前のように、さらに一歩距離を詰めてくる。

