そのキス、契約違反です。





「……来るな」



自分でも驚くほど、きっぱりとした拒絶。


彩葉の動きが止まるのが空気で分かる。



「ごめん、今……近づかないで」



必死だった。



この空間で、この状態で、彩葉を視界に入れ続けるのは——


正直、かなり危険だ。



……自分を信用できない。



「……今、近づかれたら…多分、最低なことする」



それ以上は、言えなかった。

言えば、本音が全部零れ落ちる気がしたから。


だから視線を逸らして、しゃがみこんで壁に手をつく。



……くそ。



情けない。

こんな状況で、こんな自分をさらすなんて。


でも彩葉に飲ませなくて正解だった。

それだけは、間違いない。


自分がどうなるかよりも、彩葉を守れたことに少しだけ安堵する。



そのとき。



——ドンッ!!



船内のどこかで、鈍い爆発音。