【side律】
……まずいな。
熱が、内側から滲むように広がっていくのが自分でも分かる。
酒のアルコールとは、明らかに違う。
やっぱり、そうか。
あの匂いと色の微妙な違和感。
飲んだ瞬間に喉に残った、甘さ。
毒じゃない。
殺すためのものでもない。
壁に背を預けて、息を整える。
意識ははっきりしている。
判断力も、まだある。
……まだ、だ。
でも、息が乱れて視界の端が、微かに滲む。
頭は冷えているのに、体だけが言うことを聞かない。
「律…」
聞こえた声に、反射的に肩が強張った。
視線を上げなくても分かる。
彩葉が、すぐ近くまで来ている。
そして、ほんのりと漂ってくる、彼女の匂い。

