そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~







もう、どうやって蓮さんの顔を見ればいいのかわからなくて、即座に着替えを済ませて私は自分の部屋に逃げ込むように走った。

頬はずっと熱いままだし、胸の鼓動はおさまらないまま。



気を紛らわそうと髪を乾かしてベッドに沈み込んで、布団に顔を埋めたその時──。



コンコン、と軽いノック音。


「……!」


ど、どうしよう……!
絶対、蓮さんだ。

私は聞こえないふりを決め込んで、必死にドアを見つめたまま黙っていた。



「彩葉、いるんだろ」

「いません!」



ドア越しに蓮さんの声が聞こえて、つい反射で叫んでしまう。



「いるじゃん」



そして次の瞬間、
がちゃ、と鍵の開く嫌な音。



「な……?!」

「ここ俺の家だし」



蓮さんは当たり前みたいな顔で、手に持った合鍵をひらりと見せながら部屋に入ってくる。

いやいやいや、おかしいでしょ!鍵の意味!


「プ、プライバシーの侵害……!」


思わずそう呟くと、
蓮さんは鼻で笑ったような、軽く呆れたような声を漏らす。


「女だって知ってたら、最初に合鍵はお前に渡してたけどな」

「っ……」


う……。
男装のことはもうバレている。

気まずくて、つい目を逸らす。

今は変装していないからこそ余計に、視線を合わせられなかった。

床に視線を落としたまま固まっていると、蓮さんは当たり前のように私の隣に腰を下ろしてくる。

背にはベッド、前にはローテーブル。一気に距離が縮まる。


「で?なんで男のフリなんかしてたんだよ」


もう、白状するしかない…。