「…俺達は顔が割れてるから、下手に目立てば素性に気づかれる可能性が高い。だから、その前に早くこの任務を終わらせたほうがいい」
こんなにも早く、この局面が来るなんて思っていなかった。
心臓が強く脈を打つ。
律はそっと私の手を取って、包み込むように握った。
「まずは落ち着いて、情報収集しよう」
その手はあたたかかった。
任務中だということを忘れそうになるくらい、安心できる温度。
……大丈夫、きっと成功させてみせる。
そう、胸の奥で自分に言い聞かせた。
少し考えた結果、私たちは一度別行動を取ることにした。
さっき二人であの部屋にいるところを見られている以上、一緒に動くのは逆に怪しまれる可能性がある。
船内の構造も、人の流れも、ある程度は把握できてきた。
なら、ここからは手分けした方がいい。
「……じゃあ、十分気をつけて」
「 彩葉も、何かあったらすぐ連絡して」
それだけ言って、律は人混みの向こうへ溶けていった。
軽い調子の声とは裏腹に、その背中が任務モードに切り替わっているのが分かる。
ドレスの裾を整え、仮面の位置を確かめてから、私は人の流れに逆らうように歩き出した。
船内は、表向きは華やかな社交場。
でも、その表情の裏にはもっと深い何かがあって。
視線が絡むたびに背筋が自然と伸びる。
私はゆっくりと歩きながら、さりげなく周囲を観察した。

