そのキス、契約違反です。




えっ………ちょ、律……!?


驚きで身体が強張った、その瞬間。

ふっと、視線が合った。


仮面越しでも分かる、律の、仕事モードの真剣な視線。



──あ。

そういう、こと。



理解するのに、時間はいらなかった。


私たちがここにいる理由を、一番“それっぽく”誤魔化すための行動。


だから私は、遅れてその意味を受け取って、そっと律の胸元に指を添えた。

恋人同士が自然にそうするみたいに距離を詰める。



部屋の入り口にはまだ人の気配。

視線が、私たちに向くのが分かった。



確認しているんだろう。

…資料が散らばっていないこと、棚が荒らされていないこと。



扉を開けられたことを気づいていないと認識させるみたいに、律はそのまま私をソファーに押し倒す。


視界が揺れて、

次の瞬間、柔らかなクッションに身体が沈んだ。


さすがに、資料を探るために忍び込んだ二人には見えないだろう。

誰がどう見ても、“そういう最中”。