そのキス、契約違反です。





「……誰か来る!全部戻して!」



小声でそう言って、二人で一斉に動いた。

棚の資料を元の位置へ戻し、布をかけ直す。


引き出しの奥に隠していた小型端末も、最初からそこにあったみたいに収めて。

机の上の資料は確認していた形跡を消すために、わざと雑にまとめてソファ脇のクッションの下へ滑り込ませた。


……で、どうする。


隠れる場所はないし、クローゼットもない。

ベッドの下に潜るには、狭すぎる。


部屋の隅の窓際で頭をフル回転させて、この場をどう誤魔化すか考える。


相手を追い返すには。

一番“納得させられる理由”は——



──ガチャリ、とノブが回る。



ドアが開いた瞬間、律がいきなり私の腰を抱いて引き寄せた。

距離が、急激に詰まる。



えっ、なに……!?



律がほんの一瞬だけ視線を鋭くして、

次の瞬間。


唇に、柔らかい感触。



「……!?」



完全に、不意打ちだった。

思考が止まる。

心臓が、どくん、と大きく跳ねて、息の仕方を忘れる。