そのキス、契約違反です。





「私、色んなオークションに参加してきましたけどここは初めてで。そんな面白いものを開催してる人達ってどんな人なのかしら…すごく気になるわ」



さらに一歩近づき、男の袖を指先でつまむ。

距離を詰めて、耳元へ。



「おにーさんって物知りでかっこいいのね。わたし、もっと教えてほしいなぁ?」



男の頬が、わかりやすく赤くなる。



「ん〜お嬢ちゃんかわいいから、トクベツだよ?」



……うわ。


視線が露骨に体のラインをなぞるのが分かって、背中にぞわりと寒気が走った。


でも、これくらいで動じていたら、この世界じゃやっていけない。



「たしかねえ……黒蛇会(くろへびかい)ってとこがここの主催者と繋がってるらしくてね。それ以上は俺も知らないんだ。」



黒蛇会…。

最近、裏社会で名前が上がり始めている組織。


この情報だけでも、十分な収穫だ。

……これ以上相手に余計な期待を持たせる前に、引こう。



「そうなんですねぇ!」



ぱっと笑顔を作る。



「私も一つ物知りになった気分で嬉しいですっ。ほんとはもっとたくさんおしゃべりしたいけど…お兄ちゃんが心配するので、これで失礼しますね」



律と視線を合わせて、仲良し兄妹に見えるように微笑む。