そのキス、契約違反です。





……初めての私たちは、明らかに新参者。


仮面越しでもわかる。

微かに視線が集まっているのを。



私は気づかないふりをして背筋を伸ばす。

ドレスの裾が、動くたびに軽く揺れた。



ホール中央には立食形式のテーブルが並び、奥にはカジノスペース。

さらにその奥がオークション会場へと続いているらしい。



私たちの目的は、主催側の情報源を掴むこと。

そして、最終的にはこのオークションをやめさせること。



「……あの人、どう思う?」



私が顎で示した先には、年配の男が数人に囲まれて談笑している。


仕立ての良いスーツ。

仮面の装飾は控えめなのに、周囲が自然と距離を取っている。



「………話しかけてみる価値はありそう」



律が即答する。

私たちは自然に進路を変え、音楽に身を委ねるようにゆっくりと歩きながら、男のいるテーブルへ近づいた。



「こんばんは〜」



先に声をかけたのは、私。

仮面越しでも伝わるように、ほんの少し声を甘くする。

喉の奥で、音を丸くする感覚。