そのキス、契約違反です。





「これしか置いてなかったの」

「彩葉、可愛いから変なやつに絡まれそうで心配」



そう言って律は私の巻いた髪に指を伸ばし、くるりと遊ぶ。



「……今絡まれてる」



じっと睨むと律は一瞬きょとんとしてから、ふっと吹き出した。



「はは。緊張してる?任務前になると、そうやってトゲトゲするの、昔から変わんないよね」



……自覚はない。

でも、言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。


心が張り詰めると無意識に身構えてしまう。

それを律は、ずっと前から知っている。



「……一応、聞くけどさ」



律は落ち着いて続ける。



「俺が過去のこと話したから、余計混乱させちゃってないかなって思って」



その言葉に、胸の奥がちくりとした。

でも、私は首を振る。



「大丈夫だよ。…むしろ、お陰で少し前に進めそう」



机の上に置かれていた仮面を、そっと手に取る。


まだ整理しきれていない感情は、いまは置いていく。