そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「ご、ごめんなさいっ! 大丈夫ですか!?」



すぐ耳元で、聞き慣れた声。


湯の中で抱きとめる形になっていた相手の顔を見て、心臓がドクンと音を鳴らした。



「…………彩葉?」

「っ……あ!」



驚いたように、彩葉が息を呑んだ。


今まで「もしそうだったら」という仮説で済ませてきた違和感が…今、確信に変わった。



「って、ごめ、すぐ退きますから…!」



そう言って彩葉が慌てて俺の胸の上から離れようとするけど、焦って動いた足がまた石床を滑る。



「っ、ちょ、危──」



また覆いかぶさるように崩れ込んできて、更に大きく湯が跳ねた。


さっきよりも近い。

肩と首筋に落ちてくる長い髪が、妙に生々しいほど肌にまとわりついた。

息が触れた場所が、熱い。



やばい。


この状況は…本気でまずい。



「……っ、おまえ、あんま動くなっ…!一旦落ち着け…!」



思わず低く抑えた声が漏れた。



……何これ。心臓、うるさ……



平静を装いたいのに、鼓動は早くなるばかり。


この状況で、これ以上平静を保つなんて…無理だろ…。