「お前、いるなら返事ぐらい──」
近づいた瞬間だった。
影が、ガバッと立ち上がる。
ふわっと揺れた長い髪。
濡れた白い肌。
タオルで覆っているとはいえ、どう見ても男子のものではないシルエット。
目をそらすべきだ、普通は。
だけど、一向に振り向かず黙ったままの怪しいヤツを放っておく訳にも行かず、逃げようと背を向けたその腕を反射的に掴んだ。
「待て──」
「え」
手首を掴むと、細くて軽い感触が伝わってきた。
そして相手が驚いたように体をひねった次の瞬間、
足元の石床がきゅっと嫌な音を立てる。
「うわっ──ちょ……!」
ほんの一瞬の出来事だった。
相手の身体が傾いて、バランスを崩した肩が俺の胸元にぶつかってくる。
支えようとして腕を回した、その瞬間。
┄┄┄バシャァァン!!
大きな水音と一緒に、
2人まとめて湯の中へ倒れ込んだ。
胸の上に落ちてきたのは、
細くて、温かくて、驚くほど柔らかい身体。
タオル越しとはいえ、男子の骨張った感触とはまるで違う。

