「……はぁ、一旦風呂でも入って頭冷やすか。」
家に帰ってからも落ち着かなくて、気を紛らわす為に何かしていたい。
いつもより少し早い時間だったけど大浴場の入り口を通りかかった時に札が“空いてる”側だった事を思い出して、俺は大浴場に向かった。
うちの大浴場は交代制。
入り口の札で使用中かどうかを判断するシステムだ。
俺は軽く体を洗い終えてタオルを巻いてから湯船へ向かうと、湯気が濃く視界は白くなっていた。
…でも。誰もいないはずなのに。
……今、音がした?
微かに水面が揺れたような気がして、足を止めた。
「…………おい。誰かいるのか?」
返事は無い。
でも、確かに人の気配がある。
よく見ると、白い湯気の向こうにぼんやりと“人影”が浮かんでいた。
────肩までしなだれる、濡れた長い髪。
は……女…?
でも、こんなやつウチの組にいたか…?
それに、もし女だとしたら俺の呼びかけに反応するだろう。
なのに岩場の陰に身を縮めるようにしてじっと動かない。
明らかに不自然だ。
だから、警戒のほうが先に立ち、俺はもう一歩踏み込んだ。

