【side蓮】
倉庫で彩葉を抱きとめたときの腕に残った細さと体温が…さっきからずっと頭から離れない。
……クソ、何であいつの事なんか。
…軽かったし、柔らかかったな。
男にしては──不自然なほどに。
驚いたみたいに固まったあの反応。
上目遣いで俺を見たときの揺れる睫毛。
頬を赤くして、視線を逸らした横顔。
……………いや、考えすぎだろ。
もしそうなら男子のフリなんかする理由って何だよ
初めて会ったとき、思わず「本当に男か」と聞いたけど…あれは、単なる嫌味だった。
あんな華奢なやつに守られるなんて御免だ、っていう意地。
今思えば自分でもだいぶ感じ悪かったと思う。
でも、数日間常に彩葉と一緒に過ごしてきて、やっぱり違和感があった。
男にしては華奢すぎる体格。
触れた髪の、妙に柔らかい感触。
更衣室で絶対に着替えようとしないこと。
妙に柔らかい一つ一つの仕草。
俺が近づくと、ふっと距離を取ろうとする癖。
歩き方、声。
………………つか、俺、めちゃくちゃ彩葉の事気にしてんじゃん。
…初めは護衛なんて本気でいらないと思ってたし、仲良くする気なんてなかったのに。
俺には元々、誰かと一緒にいて肩の力を抜くなんて感覚がなかった。
学校では完璧な王子様を演じてるけど、神楽の名の噂のせいで誰も本気で踏み込んでは来ない。
俺もそれが楽だったから、友達なんていらないと思っていた。
…なのに彩葉は、最初から容赦なく踏み込んできた。
取り繕うでもなく、媚びるでもなく、ただまっすぐに俺を見てきて、突っかかっても素直に返してくる。
気づいたら、授業中でも廊下でも、目で追うようになっていて。
その距離感が妙に居心地がよかった。
だからさっきも、体が勝手に動いた。
落ちてくる箱より先に、彩葉を抱き寄せていた。
「…………いや、男相手に“ドキッ”てなんだよ……。男、なんだよな……?」
否定しても、違和感は消えない。
むしろ濃くなるばかりで、息が詰まる。
…あれは、彩葉があまりにまっすぐ見つめてきたから。
心の中でそう言い聞かせるけど、彩葉を抱きしめた時の心臓の速さが全てを物語っていた。

