そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「え、人違いじゃね?」


いま修学旅行ってこと、完全に忘れかけてた。


蓮は人差し指を口元に当てて、しーっと、いたずらっぽく笑う。

もう、それだけできゅんとしてしまう。


相手の足音が遠ざかるのを感じてやっと息を吐いた、その時。


視線の先に、射的の屋台があった。


偽物だってわかってるのに、

銃の形をしたそれに、視線が吸い寄せられる。



無意識だったと思う。


気づいた時には、じっと見つめてしまっていたらしく。



「やってくかい?お姉さんかわいいから一回無料にしてあげるよ〜」



なんて、店主のおじさんがニコッと笑って話しかけられてしまった。


え。

私そんなに見てた…?!

慌てて首を振ろうとした、その前に。


「はいよ」


と、銃と球を渡されて。


手に取った瞬間、少しだけ指が固まる。

でもここでやっぱいいです、って言うのも変。


「彩葉…?」


私の異変に気づいた蓮が、すぐ隣で名前を呼ぶ。

その声に少しだけ救われて。


「なんでもない!」


とりあえず、持ってみよう。

練習だと思えばいい、そう思って構えてみる。


本物の銃よりはマシだけど…やっぱり、手が震える。


あ…だめかも、これ…。


そう思った、その瞬間。

後ろから、そっと腕を包まれた。