そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~







夏祭りの会場は、想像以上に賑わっていた。


視界の端から端まで、人、人、人。

色とりどりの浴衣が行き交って、提灯の明かりが夜をやわらかく照らしている。


……まさか、こうして浴衣を着て、

しかも隣に蓮がいて、

夏祭りを歩く日が来るなんて。


少し前までの私なら、考えもしなかった。


「はぐれんなよ」


人の波に押されそうになった瞬間、蓮の声がすぐ近くで聞こえて。

次の瞬間には、手が引かれた。

指先が、逃がさないみたいにしっかり絡められる。


でも、今ぐらい──この時間ぐらい、

何も考えずに楽しんでも許される、かな…?


りんご飴を一つ買って、

「甘すぎない?」なんて言いながら分け合って。


わたあめを落とさないように必死になってる私を見て、

蓮が声を出して笑ったり。


たこ焼きの熱さにびっくりして、

「猫舌かよ」ってからかわれたり。


金魚すくいでは、ポイを水に入れた瞬間に破ってしまって。


「えっ!!」

「下手すぎ」

「う、うるさい……!」


そう言いながらも、蓮がずっと楽しそうなのがわかって。



……こういう何でもない時間が、

こんなに楽しいなんて。


歩いている途中、ふと、聞き覚えのある名前が耳に入った。



「……今、蓮様?女の子と歩いてなかった?」



心臓が、どくんと大きく跳ねる。


びくっと肩が揺れたその瞬間、蓮の腕が私の腰に回された。


引き寄せられて、気づけば完全に蓮の内側。


体温が近すぎて、鼓動が、ばれそうで。