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夕方。
奈良での予定をすべて終えて、私たちは再び京都へ戻ってきた。
車窓から見える景色が、昼間よりも少しだけ柔らかい色に変わっていく。
──けど。
今日はこれで終わりではない。
「……あの」
更衣室の外で待っていた蓮に声をかける前、
一度、深呼吸する。
「ど、……どう?かな」
こんなに、しっかりと女の子らしくした姿で蓮に会うのは、これが初めてで。
変に緊張しまくっていた。
桜色の浴衣に淡いピンクの花模様。
髪は下ろして飾りもつけて、軽くメイクもしてもらった。
ウィッグも外して男の制服もない。
ここにいるのは、完全に“女の子”の私。
これが本当の姿のはずなのに。
なんだかすごく、落ち着かない。
「……。」
恐る恐る目線を上げると。
蓮は時間が止まったみたいに、何も言わずに私を見ていて。
……え、なに。
そんなに変?
似合ってない……?
そんな不安が一気に押し寄せて、思わず口を開こうとした、その瞬間。

