そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「遅かったね。具合でも悪かった?」



人前用の、丁寧で優しい口調。

完全に“蓮様モード”。

……なのに。


視線だけは、やたらと真剣で。

私の顔を、逃がさないみたいにちゃんと見てくる。


「……ちょっと、ね」


曖昧に答えると、蓮はふっと微笑んだ。


「話中にごめんねみんな、彩葉が体調悪いみたいだから…」


優しい声でそう言われて。

……さっきまで、あんなに囲まれてたのに。

私が戻ってきた途端、視界から他の人が消えたみたいに真っ先に私のもとに来て。

それに、胸がまた、きゅっとなる。


「全然!私達はこれで退散しますので〜!」


女子達は、あっさりと引いていった。


……私が女じゃなくて、男だと思われてるから、なんだろうけど。

 

人の気配が消えたのを確認してから。

蓮は、私の顔をじっと見て言った。



「……で、何でそんな泣きそうな顔してんだよ」



え。

そんな顔してた……?


「別に…泣きそうとかじゃない。」


…とはいえ、律との事を話すわけにもいかない。

あれは Aegis(イージス)での問題だ、巻き込むべきじゃない。



「無理には聞かねぇけど……あんま、1人で抱え込むなよ」



それ以上、蓮は何も聞いてこなかった。



昨日の夜はあんなに強引だったのに。

こういう時は無理に踏み込んでこない。

……ほんと、ずるい。