中庭を後にして朝食会場へ戻る廊下は、さっきより少しだけ騒がしかった。
人の声が増えて、食器の触れ合う音がして。
さっきまで胸に溜まっていた重たい空気が、少しだけ薄まる気がした。
……気がしただけ、だけど。
蓮のいるテーブルに戻ろうと思ってバルコニーを見た途端。
蓮が、囲まれていた。
それも一人や二人じゃない。
数人の女子に、わりとがっつり。
楽しそうに話していて、いつもの“学園の王子様”の顔で柔らかく笑っている。
なんか、久しぶりにこの光景見たかも。
別に、付き合ってるわけじゃない。
昨日だって、何も決定的なことは言ってない。
それなのに。
……ちょっと、やだな。
そんな感情が浮かんだ瞬間、自分で自分に驚く。
なに、今の。
嫉妬……?
蓮が人気者なのは今さらだ。
それに、私が男装してる以上周りから見たら“ただの仲のいい同性の幼馴染”。
蓮が誰と話していようが、私がどうこう言える立場じゃない。
……はず、なのに。
女の子に囲まれて笑っている蓮を見ていると、
胸の奥がじわじわざわつく。
理由もわからないまま、落ち着かなくなる。
その、瞬間。
ふっと、蓮の視線がこちらを捉えた。
ほんの一瞬。
でも、確かに目が合った。
そして──
蓮は立ち上がって私の方へ歩いてきた。

