「……俺ね、彩葉に危害を加えようとしたやつって許せないの。」
……え?
そう言った律の目は、今まで見たことがないくらい冷たくて。
本気の目だった。
聞きたいことは、色々ある。
でも、それよりも。
「律に、手を汚すようなことしてほしくない…」
そう聞くと、律は俯いた。
煙草を地面に落として、靴で踏み消す。
「俺は彩葉を守れるなら、なんでもいいんだよ」
なに、それ…。
「守るって………私、そんなこと頼んでないじゃん。私のために律が傷つくのは嫌だよ…」
律は確かに、いつも私の事を守ろうとしてくれる。
4年前のあの時だって、私を守ろうとして、あんな怪我をして。
でも私、守って欲しいなんて言ってない。
私の知らないところで、勝手に傷ついていく。
それで律が、私のせいで、どんどん暗い場所へ行ってしまうのは…嫌だよ。
「……また、律が1人で傷ついてたら、怒るから」
そう言うと、律は少しだけ困ったように笑った。
頭に、ぽん、と手が置かれる。
その手は、少しだけ冷たかった。
「んー、これだけは譲れないかなあ。でもありがとね。心配してくれて」
朝の光は、こんなにも穏やかなのに。
私たちの間には、まだ消えきらない煙の匂いが、静かに残っていた。

