そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「はい。」

「え?」


今度は、私の前に差し出されるフォーク。

蓮のチョコケーキ。


「お返し」


……何これ。

完全に、カップルがやるやつじゃん。


しかも、外から見たら男同士であーんしてる図だよ?


……蓮、それはいいの?


「………おいしい」


渋々そう言うと、蓮は満足そうに優しく笑った。



——付き合っては、いない。


でも。

両想い、で。


中途半端で、歪な関係。



なんでこうなってるのかは、わかってる。


蓮はもう想いを伝えてくれている。

きっと私が「好き」って言えば、この関係は“名前”を持つ。


好きと認めたはいいけど、これからどうしよう…。


それから朝食を食べてから、

頭を冷やしたくて、私は一度お手洗いに逃げた。


鏡の前で深呼吸をして、乱れた心拍を落ち着かせる。


戻る途中に廊下の窓から外を眺めながら歩いていると。

中庭の木陰に、ひとり立つ人影が目に入った。


「あ……」


足が、自然と止まる。

──律だ。


背中越しでも、分かってしまった。

いつもと立ち姿は変わらないのに、纏ってる空気感の何かが違う。