【side彩葉】
布団を片づけて、身支度を整えて。
廊下に出た瞬間、賑やかな声が一斉に耳に飛び込んできた。
「ねえ昨日の夜さー!」
「マジで眠かったんだけど!」
「朝ごはん何だろ!」
…なんか、楽しそうで羨ましいな。
胸の奥で、ちくりと何かが刺さる。
こうして周りを見ていると、私も何も考えずに高校生してみたかったと何度も思わされるから。
そんな賑やかさに包まれながらいつも通り蓮と並んで歩いていたら、朝食会場の入り口で突然腕を掴まれた。
「ちょっと彩葉貸して」
「えっ、なに──?」
有無を言わさず引っ張られて、壁際へ。
顔を上げると、音葉がぐっと距離を詰めてきて小声で囁いた。
「彩葉。昨日、大丈夫だった……?色んな意味で……」
色んな意味で…。
…多分、蓮のことと、夜の騒ぎのことを言ってるんだよね。
「う、うん。なんとか…?」
自分でも曖昧な返事だと思う。
でも、これ以上どう説明すればいいのか分からなかった。
音葉は一瞬だけ真剣な目をして、それからふっと息を吐いた。
「……そっか。ならいいけど」
でも、納得はしてなさそう。
それでも踏み込まないのが、音葉の優しさなんだと思う。
「無理してたら、ちゃんと言ってね」
その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなった。
「うん、ありがと!」
「もう終わった?」
そして、後ろから蓮の声。
「いきなりごめんね〜。用は済んだから、彩葉は蓮くんにお返しします!」
音葉はそう言って、軽くウィンクを残して去っていった。
……今の、
もしかして、変な勘違いされてない?

