そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「……情報は全部吐かせろ」



Nocturne(ノクターン)が本格的に動き出しているなら、

潰せる芽は、今のうちに全部摘む。



彩葉を狙うなら、

どんな手を、使っても。



その時。

地面に倒れていた男の一人がかすかに動いた。

まだ、意識が残っていたらしい。


歯を食いしばり、こちらを睨みつけてくる。



「……てめぇも、桜庭組の仲間か……?」



その言葉に、ほんの一瞬だけ、思考が揺れる。


……桜庭組、ね。


俺は答えなかった。

代わりに、一歩近づく。



「俺さ」



しゃがみ込んで、視線の高さを合わせる。



「彩葉に手出した奴は、許せないんだよね」



それだけだ。


わざとにっこり笑って見せると、

敵の目に、はっきりとした恐怖が宿る。


その表情を見ても、胸は一切晴れなかった。



彩葉が知らないところで起きたことは、知らないままでいい。

朝になれば、彩葉は何も知らずに目を覚ます。


それでいい。

それが、一番だ。



俺が、影になる。



車のエンジン音が遠ざかっていく。


俺は一度だけ夜空を見上げてから、静かに息を吐いた。