そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「……平気だから」



小さく呟く声。

平気そうには、見えないけど…。



「平気な顔してるだけだろ。…それに、護衛が仕事だからって、傷ついていい理由にはならねぇよ」



消毒を終えても、なんとなく手を離せなかった。

指先を包むように、自然と力が入る。



「……お前が傷つくの、嫌なんだよ」



守られる側の俺が、何言ってんだって話だけど。


…もう、好きだって気づいてからはそう思わずにはいられなかった。


彩葉が何か言いかけて、でも唇を噛んで黙り込む。



部屋の中が、やけに静かになる。

さっきまでの戦闘の余韻が嘘みたいに。



……この空気のまま、黙ってやり過ごすのは。


逃げだ。

それは、俺らしくない。



そう自分に言い聞かせて、口を開いた。



「……さっき、無理やりして悪かった」



彩葉が、僅かに目を見開く。


「…え?」

「怒って出てったんじゃねぇの?」



ずっと引っかかっていたことを、ようやく口にした。


あの背中。

何も言わずに走っていった姿。



変装してないのに、全く躊躇なく部屋から出ていった彩葉。

拒絶された、そう思った。