いや、でも。
怒っているという表情でもないような。
でも、じゃあ何だ。
どうしてそんな目をする。
さっきの敵は、何なんだよ。
頭の奥に、嫌な引っかかりが残ったまま消えない。
とりあえず、怪我をしてる彩葉の腕を手当てをしようと救急箱を取り出した。
彩葉の腕に視線を落とす。
薄く走った赤い線。
…俺を庇ったせいでできた傷。
たいした傷じゃないかもしれないけど、放っておきたくない。
「消毒するから、腕出せ」
「自分でできる」
即答だった。
視線も合わせないまま、突っぱねるような声。
理由が分からないまま距離を取られるの…正直きつい。
さっきからずっと、心臓の奥を小さな針で刺されてるみたいだ。
「震えてる手で、どうやってやるんだよ」
彩葉の指先は、ほんのわずかだけど確かに震えている。
本人は気づいてないか、気づかないふりをしてるだけだ。
返事を待たずに、そっと手を取った。
一瞬、彩葉の肩が跳ねる。
びくっとした反応に、胸が痛む。
……でも。
振り払おうとは、してこない。

