「チッ……!」
最後の一人が、後ずさって、吐き捨てるように行って去っていった。
「“桜庭の娘”、覚えてろよ……!」
その言葉に。
彩葉の動きが、止まった。
「……え?」
逃げる背中。
その胸元で一瞬、銀色の何かが光る。
そして、彩葉の目が大きく見開かれる。
「……あの、銀のピンバッジ……」
絞り出すみたいに、彩葉はつぶやいた。
「……まさか……」
その瞬間、彩葉の身体から力が抜けて。
「彩葉!」
俺は咄嗟に、彩葉の手を掴んだ。
…震えてる。
驚くほど、冷たい。
「落ち着け」
「嘘……なんで、まだ……」
瞳が揺れている。
さっきまでの鋭さはどこにもなくて、ただ怯えた女の子の目だった。
……この手に、この背中に、一体何を背負ってきたんだろう。

