……くそ。
若頭なんて肩書きがあっても、結局俺は一人の人間だ。
背後を取られた自分の甘さに、吐き気がする。
でも、俺にも俺のやり方がある。
俺は、ゆっくりと息を吐いた。
「俺のことは、どうでもいい」
はっきりと、言葉にする。
「……でも。彩葉に、指一本でも触れたら──殺す」
その瞬間。
男たちが、一瞬だけ躊躇する。
──今だ。
そう思った、その時。
俺が動く前に、ナイフを持った腕が強い衝撃で弾かれた。
金属音が、地面に落ちる音。
まさかと思って振り返ると、
「お前、なんで……!」
彩葉が、息を切らしながら、俺の前に立っていた。
「話はあと!」
普段とは違う、仕事モードの鋭い視線。
戦闘は、一瞬だった。
彩葉は迷いなく動き、的確に相手の急所を叩く。
無駄のない動作。躊躇のない判断。
俺が知っている、護衛としての彼女の姿。
やっぱり彩葉は、「強い」なんて言葉で片付けられるレベルじゃない。
だけど、それ以上に。
男なら、好きな女の子を守る側になるべきなのに。
守られる側に立たされている現実が、胸に刺さる。

