「あ、えっと……一つずつお願いします……!」
私は蓮さんの護衛として来ただけなのに何でこんな状況に…。
クラスで注目される未来なんて想像していなかったので、完全に予想外の展開だった。
戸惑っていると、隣から蓮さんの柔らかい声が響いた。
「みんな、そんな一気に話しかけるから彩葉が困ってるでしょ」
その一言だけで空気がすっと落ち着き、周囲が一斉に引き下がる。
「あっ、そ、そうだよね……ごめんね桜庭くん」
「蓮様の言うとおりだわ、つい舞い上がっちゃって…」
胸をなでおろしながら隣を見ると、蓮さんは涼しげな横顔のまま微笑んでいた。
……何度見ても、昨日とのギャップがすごすぎてツッコミたくなる。
「あ、ありがと」
思わず礼を言うと、近くにいた女子が様子を伺いつつもまた勢いを取り戻して声を上げた。
「……で、2人ってどういう関係なの?仲良さそうだよね!」
その子がそう言うと、周りの女の子達もキラキラした目でこちらを見てくる。
…これは、答えるまで逃がしてくれないやつ。
でも、常に傍にいなきゃいけない以上「昨日初めて会いました」なんて言えないし、変なこと言ったら蓮さんに怒られそうだな……。
私は返答に迷い視線を送ると、蓮さんはほんのわずかに目を細めてふわっと柔らかく笑って──
「彩葉とは幼なじみなんだ。家も隣でさ、昔からずっと一緒。ね?」
……王子スマイルを崩さずに、当たり前かのようにとんでもない嘘を自然にぶっ込んできた。
同時に肩をぐいっと引き寄せられて、身体の距離が一気に縮まる。
実際の力は思っていたより強くて、勢いで蓮さんの肩へ体が寄ってしまった。
……というか、幼なじみ設定で行く感じなの!?
隣なのは家じゃなくて部屋だし……。
「そ、そうなんだよ〜。蓮とは!幼なじみで……!」
“合わせろ”とでも言いたげな瞳で近距離から見つめられ、もうどうにでもなれの勢いで乗るしかなかった。
……どうなっても知らないからね…
そして、案の定周囲の女子たちが一斉に息を呑む。

