そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




【side 蓮】






ドアが勢いよく閉まる音が、耳の奥に残っていた。


彩葉が部屋を飛び出していったあと。

俺は…すぐに追いかけることが出来なかった。



足が動かなかったわけじゃない。

ただ、動いていいのか分からなかった。


……やっぱり、嫌だったのか。


扉の向こうにもういないと分かっているのに、

俺はしばらく、そのドアを見つめたまま立ち尽くしていた。



でも。


彩葉のあの表情は…嫌がっているようには、見えなかった。

揺れる瞳に、確かに持っていた熱。


そもそも、彩葉が本気で嫌なら

あの状況で俺のキスを受け入れるか?


あいつは俺の護衛を任されるほどの腕を持っている。

ただの弱い女の子じゃない。


嫌なら、殴ってでも、突き飛ばしてでも、止められたはずだ。


……だからこそ。

期待してしまった。



それに―、

「律といて、俺のこと思い出した」って。

あれは、期待してもいい言葉だったんじゃないのか。

…そう思った自分が、浅はかだったのか。