そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「彩葉!!」



少し遅れて、音葉が中庭に飛び込んできた。

息を切らして、私の前まで来て肩に手を置く。


「……っ、もう……! いきなり走り出すから……」


そう言って私の顔を覗き込んだ瞬間、音葉の表情が変わった。



「……なにが、あったの」



ただ真っ直ぐな目で、私を見た。



「……顔、真っ赤だし……泣きそうだし……」



何も言えなかった。

言葉にしたら、全部溢れてしまいそうで。


「一旦、落ち着こ?」


そう言って近くのベンチに座らされる。

黙ったまま俯くと、音葉は一度だけ小さく息を吸って、私の隣に座った。


正面にある噴水の水音が、一定のリズムで夜に溶けていく。


しばらく音葉に手を握られたまま、私は黙り込んでしまう。


「……彩葉」


名前を呼ばれて、肩が小さく揺れる。



「蓮くんと、何かあった?」



……。

ゆっくり、確認するみたいに音葉は私の顔を覗き込む。