息が乱れて、胸が苦しい。
さっきまで触れていた唇の感触も、声も、体温も、
全部まだ残っている。
頭を振っても、消えてくれない。
角を曲がった、その瞬間。
「え、彩葉!?」
聞き覚えのある声に、反射的に足が止まりそうになる。
視線を向けると、音葉がちょうど自分の部屋に入ろうとしていたところだった。
寝巻き姿のまま、目を見開いてこちらを見ている。
「あ……」
多分、私が男装しないでこんなところにいるから驚いているんだと思う。
私は何も言えないまま視線を逸らして、そのまま走り抜けようとした。
「ちょ、その姿でどこ行くの!?」
普通じゃない状況の私を心配してか、背後から慌てた声が追いかけてくる。
外への扉を押し開けると、ひんやりとした夜気が肌を包んだ。
私はそのまま中庭へ向かい、噴水の縁まで来てようやく足を止める。
「……はぁ……っ、は……」
膝に手をついて息を整えようとするけど、全然うまくいかない。
心臓が、まだうるさい。
好きだって、認めてしまった。
どうしたら、いいの。

