「でもさあ、あの桜庭の娘がこんな簡単に相手に触れさせて良いわけ?油断しすぎじゃない?」
………!!
私今男装もしてるのに、完全に、バレてる。
「あなたからは…敵意を感じません。私を傷つけるのが目的ではないんでしょ。要件はなんですか」
そう冷静に言うと、男は楽しそうに笑った。
「…俺の欲しいものを、君は全部持ってる。だから俺は、キミが欲しい」
……どういうこと?
意味が分からない。
そもそも、面識ないのに。
返事を探している間に、背後から気配が近づいてくるのを感じた。
それに気づいたのか、男はふっと手を離し
何も言わず、そのまま夜の人混みに紛れていった。
「彩葉?」
名前を呼ばれて、はっとする。
「っ…」
振り返ると、蓮が心配そうにこちらを見ていた。
「顔色悪いけど……大丈夫?」
「…う、うん、なんでもない!大丈夫だよ」
律にも心配されて、私は慌てて笑って誤魔化した。
……今の、何だったんだろう。
2人に言うべきかな…。
ホテルに戻るバスの中、私はほとんど外を見ていた。
窓に映る自分の顔は、思ったよりも青白い。
そのままホテルに戻って、それぞれの部屋に分かれる。
さっき、律にキスされそうになった時に蓮のことを思い出してしまった自分。
そのことで、昨日と同じ部屋なのに更に意識してしまっていた。

