そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





正直、どっちが勝っても複雑だった。


こんな狭い空間で2人きりなんて。

どうしていいかわからなくなるから。


「……俺の負けだ。行ってこい」


「じゃあ、遠慮なく。彩葉、行こ?」



そう言って、律が私の手を取る。

…夜の暗さのせいで、蓮の表情は最後まで見えなかった。


そのまま律に引かれて、私は観覧車のゴンドラへと足を踏み入れる。


ゴンドラの中は、思ったよりもずっと狭く感じた。


扉が閉まる音が響いて。

それだけで、逃げ道を塞がれたみたいな気分になる。



……なんで、こんなに緊張してるんだろ。



ゴンドラは、きし、と小さな音を立てて、ゆっくりと上昇を始めた。

光が滲んで、遠ざかって、現実感が薄れていく。


そう思うのに、視線はどうしても隣に座る律に引き寄せられてしまう。



肩が触れそうで触れない距離。

でも、隣に律がいるのはやっぱりなんだか安心感がある。



…というか。


観覧車のゴンドラの中。

真正面じゃなくて、横並び。


こういうのって普通、正面に座るものじゃないの……?



「綺麗だねー…」



……こっちの気も知らないで、律は何でもないみたいに外の景色を見て言った。


観覧車が回るたび、ゴンドラが小さく揺れる。

その振動に合わせて、律の膝がほんの一瞬だけ私の膝に触れた。