そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




やがて、風が止まると部屋が一気に静かになって、

蓮の手が、私の髪をまとめるようにしてそっと離れた。


「……終わり」

「…ありがと」


立ち上がろうとした、その時。



「なぁ。…少し、散歩しに行かねぇ?」


「散歩…?」

「このホテルの裏、夜景きれーなんだって。」



散歩……まぁ、それぐらいなら全然良いけど…


と思いつつ、私は自分の服装を見下ろして、はっとする。


ワンピースに薄手のカーディガン。

今日はもう、男装していない。



「でも私、女の子の格好だし…」


言いかけたところで、蓮が即答する。


「知ってる」

「え、じゃ…」

「もうすぐ消灯時間だし、誰も見てねぇよ。」


そう言いながら、自然に私の手首を取る。

強くはないけど、離すつもりがない握り方。



「行くぞ」



廊下は静かだった。

すでに灯りは落とされていて、足音がやけに響く。

誰かに見られたらどうしよう、ってヒヤヒヤしながらも、幸い誰にも会わずに裏の庭までたどり着いた。