「……なあ」
呼ばれて、びくっと顔を上げる。
蓮はベッドに座ったまま、顎で私を指した。
「それ、外したら?」
一瞬、言葉の意味が理解できなくて、瞬きをする。
「え?」
「ウィッグ」
あまりにも自然な口調で言われて、思考が止まる。
「あ…別に、そのままでもいいかなって」
反射的に答えると、蓮は少しだけ眉を上げた。
「なんで」
「なんでって……」
誰か来るかも、とか。
バレたら、とか。
理由はいくらでも思いつくのに、どれも口に出す気になれなくて。
……でも、本当は。
これを外したら、完全に“女の子”になってしまうから。
蓮は立ち上がって、私の前に来た。
「俺の前でぐらい、気抜けば」
その声は思ったよりも柔らかくて。
ただ当然みたいに言われたのが、いちばんずるかった。

