そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~







廊下を歩く隣で、蓮はいつも通りの顔をしていた。

何も気にしていないみたいに、ポケットに手を突っ込んで、のんびりと。


部屋に入ると、思っていたよりも広かった。

窓の向こうには中庭の噴水が静かに揺れているのが見える。


…そして、二つ並んだベッドが、やけに近く感じる。

視線を逸らすように、私はバッグを床に置いた。


ドアが閉まる音が思った以上に大きく響く。



「……はぁ」



無意識に漏れた息に、蓮はベッドに腰を下ろしながらこちらを見た。



「そんなため息つくほど?」

「え、あ、そういうため息じゃないよ…!?」



慌てて否定するけど、否定すればするほど怪しい気がして、口をつぐむ。


……だって。

修学旅行前に、律に言われた言葉が、どうしても頭をよぎる。


——夜に男の部屋来るとか、無防備すぎ。


あの時は冗談みたいに流したけど、



今は、目の前に“男の子”がいて

同じ部屋で、同じ夜を過ごす。



しかも、その相手が蓮。



無意識に、ウィッグの位置を直していた。

いつもの癖みたいな仕草。


その仕草を、蓮は見逃さなかったらしい。