「え!?そ、そんなことない!」
慌てて否定すると、律が小さく笑った。
「ほんとに?」
前は、こんなふうに距離を詰められても、そこまでいちいち気にしていなかった。
幼なじみだから、律だから、って。
やっぱりあれは、冗談なんかじゃない。
つい、目を合わせていられなくて視線を逸らした。
そして律は、声を落とし、私にだけ聞こえるくらいの距離で言う。
「もし、俺のこと意識してくれるなら…嬉しいけどね?」
……やっぱり、この人わざとやってる。
屋台通りに入ると、甘い匂いと油の香りが混ざり合って、急に現実に引き戻された。
「見て見て、あれ美味しそうじゃない?」
音葉が指差した先には、行列のできた屋台。
「音葉、さっきからすごい食べてない?」
「修学旅行だよ? カロリーゼロ!」
「なにそれ」
意味不明な理論を振りかざす音葉に、思わず笑ってしまう。
「…私も何か食べようかな!」
悩んで、考えて…ぐちゃぐちゃになっていた気持ちが、
ほんの一瞬だけ、どうでもよくなった。
——こうやって四人で歩いている時間は、確かに楽しかったから。
なんだかんだで4人で京都を満喫して、夕方の集合時間になっていた。
集合時間に私たちはホテルへと戻って、全体集合が終わり、廊下にざわざわとした足音が戻ってくる。
「じゃ、解散でーす。それぞれホテルで過ごしてください!消灯は二十二時ねー」
担任の声が遠ざかるのを合図に、生徒たちがそれぞれの部屋へ散っていく。
私は、手にした部屋の鍵をぎゅっと握りしめたまま、深く息を吸った。

