「い、いきなり後ろから声かけないでよ…」
「あ、ごめんごめん。そんなにびっくりすると思わなかった」
……あれから、律はあの夜のことを一切口にしてこない。
本当に、何事もなかったみたいに。
いつも通りで、明るくて、優しい。
だからこそ私も自分の気持ちが更に分からなくなってしまった。
………やっぱり私を揶揄っていただけ…?
と思う瞬間もあるけど…あの時の律の表情は、どう考えても冗談には見えなかった。
だから、どう接していいのかいまだにわからなくて。
視線を合わせるだけで、心臓が変な音を立てる。
…でも、ひとつだけ明確に変わったことがあった。
「あ、ここのお店知ってる」
私の右側で携帯を操作していた音葉の画面を、私の左側から私を挟むようにして、律が覗き込む。
そして普通に話を続ける音葉。
「え、どれどれ〜」
「いま見てるやつの、ちょっと上の…」
……あの一件があって以降の律…
いつも以上に、近い。
明らかに距離感がおかしい。
私を挟んでるの、わざとやってる???
いつもはそんなに気にしてなかったけど、気にしないでいられるわけもなく…。

