そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「……ごめん」



律はそう言って、身体を起こした。

掴まれていた手首が、そっと解放される。


「いきなりこんなことするつもりじゃなかったんだけど…」


私も遅れて身体を起こすけど、まだ少し息が乱れていた。


「抑え、効かなかった」


私は、ベッドに座ったまま、動けずにいた。

胸の奥が、ぐちゃぐちゃで。



昨日のことも、まだ整理ついてないのに

またひとつ、悩みが増えてしまった。



……律のことは、好きだ。



私の今があるのは律がいたからで、
それくらい、たくさん支えてもらってきて。

一緒の任務は楽しくて、
一緒にいると、安心して。


でも、この好きは、友達としての好き…?


…だって、ずっと子供扱いされていると思っていた。

口説くような言葉も、年下の私を揶揄っているだけだと思っていた。


危険と隣り合わせの仕事だから、
これ以上、誰かと深く関わるのが怖くて。

それでいいと、思っていたのに。


私も、自分でも自分の感情がわからない。



「混乱するよね…ごめん。……別に、返事が欲しくて言ったわけじゃないから。」



そう言って、私の頭にぽん、と手を置く。

その仕草は、いつもの律で。


さっきまでの空気が嘘みたいに、ふっと緩む。


「俺、風呂行ってくるから。その間に自分の部屋に戻りな」



冗談っぽく、いつもの調子で笑う。



「じゃないと、次はホントに食っちゃうからね」



ドアが閉まる音が、やけに大きく聞こえる。



ベッドに一人残されて、私はしばらく動けなかった。