【side彩葉】
「俺がどれだけ我慢してるか……知ってる?」
え——?
問い返そうとしたその瞬間。
視界がふわりと揺れて、気づいたときには腕を掴まれていた。
ぐっと力が込められて。身体が後ろへ押される。
足がもつれてバランスを崩したまま——
背中に、柔らかな感触。
「り、つ……?」
見上げた先にあったのは、いつも私に向けられるあの優しい笑顔じゃなかった。
ただ、まっすぐで、鋭くて。
その視線に射抜かれた瞬間、身体が強張る。
「………ねえ。」
今まで私に向けられたことのない、声色。
それだけで、背筋にぞくりとしたものが走った。
「これ、何?」
律の指先が、私の首元に触れる。
……これ?
一瞬、何を指しているのかわからなくて。
でも次の瞬間昨日の記憶が一気に蘇って、自覚した途端、顔が一気に熱くなる。

