「俺だから?」
逃げる気配はない。
むしろ、不思議そうに見上げてくる。
……それが、いちばんまずい。
「だって、昔もよくこうやって部屋に遊びにきてたでしょ。……律といると、安心するっていうか…」
無意識。
だからこそ、致命的な一言。
胸の奥で、何かが音を立てて切れた。
「彩葉さ」
自分でも分かる。余裕がない。
てか、むしろ今日まで我慢してきた俺を褒めるべき。
「俺がどれだけ我慢してるか……知ってる?」
彩葉が戸惑ったように瞬きをする。
……だろうね。
彩葉は、いつだってそうだ。
自分はどこか一線を引いて、踏み込ませてくれないくせに。
無防備に触れて、無自覚に期待させる。
それで、平気な顔をしてる。
俺だから平気、じゃない。
俺が、耐えてるだけだよ。
……もう、限界だった。
俺は彩葉の手首を取って、
そのままベットに押し倒した。

