「誰の指示?」
答えは返ってこない。
代わりに、逃げようと暴れ出す。
次の瞬間、首元を叩いて意識を刈り取った。
「……ったく」
地面に崩れ落ちた体はまだ呼吸している。
問題ない。
いつもの手順で、本部に連絡を入れた。
「……確認した。今すぐ引き取ってくれ」
Nocturne。
あの文字を見た瞬間、嫌な予感は確信に変わった。
………彩葉の事は全部、俺が守る。
だから彩葉はまだ、知らなくて良い。
余計なものを見せるつもりも、背負わせるつもりもない。
怪しい奴がいたことも…全部、俺だけが知っていればいい。
結局、街を一日歩き回って、本部に戻った頃には陽が落ちていた。
最初は。彩葉もどこか他のことを考えていた。
でも、途中からはちゃんと笑ってくれていた。
あの笑顔が、好きだ。
もう二度と、昔みたいな思いはさせたくない。
自分で言うのもあれだけど。
あの頃、彩葉が笑顔を取り戻したきっかけは、俺だったと思ってる。
それと同時に、俺に“心からの笑顔”を教えてくれたのは、彩葉だった。
昔から誰かに本気で必要とされたことがなかった俺を、必要としてくれた。
俺も、彩葉から、たくさんのものをもらってきた。
だから──
彩葉のためなら、なんだってできる。

