そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




——お願いだから。

これ以上、近づかないで。

私の中に、入ってこないで。


最初から、大事な人なんて作るべきじゃない。
また失うのが怖い。

私は、それでいいはずなのに。



「……私はただの護衛だよ」



絞り出すみたいに言った言葉。

それは言い訳で。
自分自身にかける、ブレーキだった。

好きって言葉を受け止めたら、戻れなくなる。
そう、分かってるから。


そもそも、この仕事だってそういう契約だ。

これ以上の関係は望んではいけない。

生きる世界も、立場も、違いすぎる。


蓮は、一瞬だけ黙って。


「関係ねぇよ」


それから、小さく笑った。


「護衛でも、なんでも」


私の方を見て、はっきり言う。



「俺が好きなのは、女の子の、彩葉だ」



胸が、苦しい。

………そんなこと、初めて言われた。

…こんなの、ずるい。



夜は、まだ深い。

答えなんて、出せないまま。


それでも。


この人の隣にいることを、

私はもう、簡単には手放せない気がしていた。