そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




「……はぁ、」


……私、何してるんだろ。


不安が、胸いっぱいに広がっていく。

ふと、脳裏に浮かぶ顔。


……律。

Aegis(イージス)にいた頃、何も感じなくなっていた私の隣に、いつも当たり前みたいに立っていた。


不安定になった私に、
何も聞かずに、何も押し付けずに、
ただ、黙ってそばにいてくれた。

感情を失った私に、笑顔を思い出させてくれた人。



「…なんで、今……律のこと思い出すの………………」



自分でも分からなくて、思わず苦笑がこぼれた。


そのとき、背後で砂利を踏む音がした。

反射的に振り返る。



「……起きてたのか」



縁側に立っていたのは、蓮だった。


……どうやら、同じように眠れなかったらしい。
少し乱れた髪に、完全に覚めきっていない目。


私の手の中の銃を見て、一瞬だけ視線が止まった。

何も言わない。
でも、その沈黙が、逆に胸をざわつかせた。

夜風が、私たちの間を抜けていく。